第32章 追憶
「全く…何やっても様になっちゃうのが癪に障るわ。」
ため息をつきながら、小さくなる背中を見つめる横で私は女性の横顔を見つめる。
「え?」
私の声に、我に返った表情は恥ずかしそうにうっすら染まる。
「あ。ごめんなさいね。」
少し照れた笑顔に、私の緊張も若干ほぐれた気がした。
「さて、行きましょうか。」
その声に続いて、一歩一歩と歩みを進める。
部屋に入る所で、息を吸い込みゆっくり吐き出す。
一度目を閉じて、瞼を開けばスイッチが入る。
大丈夫。
私なら出来る。
そう自分に言い聞かせるの。
「はい!宜しくお願いします!」