第26章 癒着*
聞こえる音。
空気清浄機?
空調?
少し痛む頭…
重い瞼を開けば見慣れぬ景色。
フカフカの枕。
頬に触れる素肌。
嗅ぎなれない香り。
昨夜のことを思い出す。
記憶が飛ぶほど、飲んでないし。
それに…
最終的に望んだのは私。
乗せた頭がゆっくりと上下する。
見上げればのど仏。
ジッと見つめれば、ギュッと肩を抱かれた。
「そんなに見つめたら穴が開いちゃうよ。」
急に聞こえた声に肩が跳ねる。
「すみません…」
「あはは。冗談冗談。」
「おはよう。日菜乃。」
耳に届く心地良い低めの声。
「おはようございます…櫻井さん…」
「キミと朝を迎えられて嬉しいよ。」
「櫻井さん…そんなサービスしなくて良いですよ…」
苦笑しながら、話し掛ければ額に口付けられる。
「サービスじゃない。本当にそう思ったんだけど。」
「もうひと眠りしよう。」
「まだ外は暗いよ。」
有無を言わさず胸の中に閉じ込められた。
「おやすみ…日菜乃。」