第3章 憧憬
背を向けて、走り去る姿を見つめる。
『好き』か。
俺なんか好きになる物好きがいるんだな。
バックに入ったミネラルウォーターを取り出す。
はぁ。
好きな人には好意を寄せて貰えない。
それどころか肩を抱けば、叩かれるし。
どうしたら相手にして貰えるんだろう。
『分かってますよ。それくらい。』
『入野さんが誰を見てるかなんて、前から知ってますから。』
俺ってそんなに分かりやすいのかな。
それなのに、あの人には気付いて貰えない。
あのコからしたら、俺も同類か…
苦笑しながら、残り少ないミネラルウォーターを飲み干す。
「なかなか上手く行かないね。」
カノジョが消えた方向とは別の裏口を目指して歩き出した。