第10章 エスポワール=希望
「いいや、全然飲んでもいいよ。
むしろ、飲まないと寒いんじゃない?」
「うん。寒い」苦笑
「今日は特に冷えてるな…」
「確かに…冬みたい…」
冬…雪遊びしたいなー
なんて思ったり
「スイちゃん。」
「?なーに?」
「スイちゃんの両親ってどんな人?」
両親…
「んー…とても優しい人達だったよ。
私と弟の事を大事に育ててくれた人達。」
「そっか。」
「フフ…サンジ」
「?なに?」
「サンジの両親の話も…今度聞かせてね?」
「また、機会があれば…ね」
「待ってる。」
「おう。」
「サンジ、早く寝ないと朝、起きれないよ?」
「それもそうだな…もう寝るよ。
あ、ちょっと待ってて」
そう言ってサンジはキッチンへ行ってしまった
「?」
数分後、サンジがキッチンから出てきた
「これ、良かったら飲んで。」
サンジが差し出してきたのはとてもいい香りのする、暖かいゆずレモン。
「いい香り…」
「多分、ココアよりも暖まると思うよ。」
「ありがとう。サンジ」
「どういたしまして。おやすみ、スイちゃん」
「うん!おやすみ、サンジ」
サンジは男子部屋へ戻って行った
「ふぁー。暖まるー」
さっそくゆずレモンを飲んでいた
めっちゃ美味しいんだけど。
え、甘さもちょうど…
すごいなぁ
そう言えば、母様もよくゆずレモン作ってくれたっけ…
¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯
『スイ』
『なーに、母様』
『今日は寒いから、これを飲みましょう?』
そう言って母様は私にゆずレモンをくれた
『あ、ゆずレモン!』
母様は笑顔だった
『冷めないうちに飲まないとね。』
『うん!』
『スイ、』
『なーに?』
『私の事、忘れないでね?』
『?忘れないよ?』
ギューッ
母様に抱きしめられた
『母様?』
『どうか、生き延びて…((ボソッ』
母様がボソリと呟いた言葉を私は忘れない
今思えば、母様はこれから起こることを知っていたのかもしれない
もう、本人はいない
確認のしようがない
¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯
「スイは生きてるよ、母様。」
ポツリと私は海に向かって呟いた