第8章 ななつ振って
《仁王side》
もたれ掛かってくる小さな体を抱き締め、その温もりに安堵する。
この頃、一緒にサボると必ずと言っていいほど鈴奈はよく眠る。
もしかしたら、家で眠れてないのかもしれない。
顔色が優れず、寝かせるために無理やり連れ出すこともあるくらいだ。
「おかーさんもびっくりじゃ」
今なら乳飲み子を抱えた母親よりも心配性の塊になれそうだ。
眠る顔はどことなく安らかで、少しでも信頼してくれているのかもしれないと都合よく解釈しながら青色の空を仰ぐ。
まるで、彼女の瞳のように澄みきった青。
それは同時に、彼女が恐れを隠さぬ色だ。
救うと決めた。
独り震える愛しいこの少女を。
だが、まだわからない。
彼女が何を抱えているのかも、何に縛られているのかも。
「教えてくれんか?」
そうしたら、必ず救ってみせるから。
何があってもその手を離さないから。
頬を伝った汗がコンクリートを濃く染めた。