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遠い約束

第8章 ななつ振って


気がつけば、もう夏は本番。
太陽は明るく元気に輝いている。
何を言いたいか。
つまりは、暑いので離してくれませんか、だ。
「ね、仁王くん」
「あー…っついのう、俺のライフはもうゼロじゃ」
「うん。だから離して。私のライフもザリザリ減ってく」
お腹の前で組まれた手を叩いてみても、返ってくるのはとんちんかんな感想ばかり。
この暑いなか、いくら体温が低めとはいえ人間が二人くっついていれば当然しんどい。
けれど。
青く澄みわたる大空を見ても平静を保てているのは、間違いなく彼のお陰で。
「……チャイム、鳴ったら起こして」
「ん、りょーかいナリ」
華奢に見えて、思っていた以上に広い胸に頭を押し付けて、そっと瞼を下ろした。
あんなに泣いていた彼女は、何故か何も言うことなく、意識は真っ直ぐ夢へと突き進んで行く。
この頃すっかり浅くなっていた眠りだが、不思議なことに彼の隣なら安心できる。
彼の隣なら、声は聞こえない。
忘れたいわけじゃない。
だけど…
「鈴奈、俺はここにいる」
耳元で囁く声が、髪を梳く手が、ただただ幸せだった。


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