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遠い約束

第7章 むっつ振って


「休み?」
「おん。―――教室には来んかった」
それどころか、よく共にサボる中庭や屋上にも。保健室にもいなかった。
「そっか…。じゃあ仁王、無断欠席はダメだよって伝えておいてね?」
「―――了解ナリ」
ちらっと黒いものが見えなくもないが、自分でいかないあたり、幸村も大分彼女に甘くなったのだろう。

「……ってか先輩! 離してくださいよ!!」
思い出したように騒ぎだした赤也の頭を今度は一度撫で、僅か1ヶ月で変わった部室を見渡す。
彼女は、確かに自分たちを変えた。
今はまだ分かりづらい、小さな差ではあるけれど、少しずつ。

「彼女をマネージャーにしたのは正解だったようだね」
全てを見透かす笑みに、かすかに顎を引いて同意を示す。
強さを求めるあまり、他者を排除し続けてきた俺たちレギュラーの世界は、ひどく狭いものだ。
その閉ざされた世界の門を、少女は開け、まだ世界は広いのだと教えてくれた。
変化―――恐ろしくも、その言葉を期待していたのは俺だけじゃなかった。

「きっと、俺たちはもっと上へ行けるよ」
変わることで、見つけた力を手に。
「連れていかんとのう―――あいつも」
俺たちを変えてくれた少女。
彼女は何かに縛られている。
それを解いてやらねばならないと思うのは―――

「鈴奈先輩も、仲間ッスもんね」
訳がわからないと目を丸くしていた赤也が、明るく笑う。
そう、仲間なのだ。
もう、これ以上彼女を独りのままにさせるわけにはいかない。
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