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遠い約束

第7章 むっつ振って


【あの日】まで、私は確かに幸せだった。
少なくとも私は、そう感じていたはずだ。
父はいなかったけれど、優しい母と、片割れとも言える姉がいて。
いつも三人で笑っていた。
ずっと笑える、はずだった。

『すぅちゃん…』
甘さを含む幼い声が、歪む。
忘れないで。
そう囁く彼女は、いつも泣いている。
泣きながら、訴える。
何度誓っても、何度祈っても、ただ繰返し同じ言葉を口にする。

「忘れ、ないよ」
ちゃんと覚えてる。忘れない。
幸せを壊したのが私だって。
貴方が泣くのは私のせいだって。
みんな、私が悪いって。
大丈夫、忘れない。
この身に沈む十字架を、決して下ろさない。

『すぅ…ちゃ……』
また、声が遠くなる。
もう、彼女は笑ってくれないのだろうか。
「恨んでる…?」
きっと、恨んでるだろう。
彼女たちを、殺したわたしを。

忘れないで、と。
また涙に濡れた声がした。
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