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遠い約束

第6章 いつつ振って


ざわり、ざわり。
廊下を進む度に大きくなるざわめきに、そっと目を伏せる。
何が楽しいのか、馬鹿みたいな笑い声が虚しく響き、消えていく。
そう思えてしまうのは、自分に欠落があるからだろうか。

つまらない。うるさい。―――きらい。
けれど。
角を曲がった途端静まり返ってしまった空気は、もっと嫌い。
珍しそうにまとわりつく視線が気持ち悪くて、一瞬足元が揺らぐ。

(―――イヤだ)
人は、いや。
異物は敵として、すぐに弾き出す。
人に作られた、都会も、建物も。
居場所なんて一つもくれない。
喧騒も静寂も、全部人工で、全部嘘。
ぐ、と唇を噛んだとき。

『仁王像が雅に治める、で仁王雅治ナリ』
今日会った、あの人を喰らう笑みを浮かべる銀の人を思い出した。
あの人は、愉しい。きっと、愉しくなる。
なぜか確信に近いその思いに、口元が自然と緩んだ。
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