第5章 よっつ振って
「で、候補は決まったかい?」
午前中一緒にサボった銀の人に連れて来られた屋上は、扉を開ける前からやけに重苦しかった。
「ね、行きたくない」
「奇遇じゃの。俺もじゃ」
本来賑やかなはずひ昼休みの屋上。
なのに、なぜか聞こえてきたのは冒頭の笑みを含んだ男子生徒の声一つだけ。
階下の騒ぎすら、いつもより密やかに思える。
「行かなきゃダメ?」
「…おう。頷いたからには道連れじゃ」
「ん。じゃあ―――」
ふと、隣にあった手を握り、同時に屋上への扉を思いきり開け放った。
「こんにちは、お届けものです」
仕方がないなら腹を括ろう。
大きな手を引っ張って、戦場へと足を踏み入れた。
『ねぇ、すぅちゃん。あたしね―――』
ぐん、と近づいた青空に、彼女の声が木霊した。