第3章 未来は拓けてる
「それ、影山くんが言うの?」
「は?俺は美術はいっつも2とかだし、天才には程遠いだろーが。」
「いや、そうじゃなくてさ。」
影山くんの評定なんて、初耳だし。
やっぱり少しずれているのか、阿呆なのか。
あまり爆笑してると、影山くんは顔を顰めた。
わたしも笑い過ぎたな、と両手で頬を押さえる。
「わたしこそ、影山くんは天才だと思ったよ。バレーね。
王様って言われるぐらいの天才なんだって。あ、王様って呼ばれるのは嫌なんだよね、ごめん。
でも、放課後に練習してる影山くんで見方変わった。
元気貰ったし。だから、影山くんのおかげって、言ったの。」
「ああ、あん時の帰り…」
影山くんは納得したように、でも聞いてなお戸惑った様子だった。
「努力してないんだなあって思ったよ。今まで努力しないでも、評価されちゃってたんだよね、わたしの場合。
だから今から努力して、も一回這い上がれるかなって思って。
まだ楽しくはないかもしれないけど、また楽しく、絵、描けるようになりたいし。絵、好きだし。」
「好きなら続けられんだろ。」
即答した影山くんの一言は、力強いものだった。
さっきの褒め言葉もだけど、本当に真面目で裏表のない言葉ばかりなんだな、この人は。
少し涙腺が緩んだ。