第2章 後編
それを見て慌てて元の姿に戻る彼。
「す、すいません! 驚かせてしまいましたか!?」
「ちが……」
うまく喋れない。
嬉しくて、嬉しくて……。
胸がいっぱいで。
「この子、ずっと貴方のことを待ってたんですよー」
友人が、横から顔を出して言う。
「一度会っただけの貴方をずっと。ねっ」
そう言って友人はユメの肩をポンと叩いた。
「それじゃ、私先に帰るね!」
「えっ!?」
バっと友人を振り返るユメ。
「……良かったね、ユメ」
友人は小さく言うと、笑顔で手を振って走って行ってしまった。
それを涙目で見送るユメ。
――いきなり、二人きりになってしまった……。
一気に心拍数が上がる。
「そうだったんですか?」
彼の声が後ろから掛かった。
ユメは涙を拭って振り返り、真っ赤な顔で彼を見上げた。
「あの時は助けてくれて、本当にありがとうございました!」
そのままユメはぺこりと頭を下げる。
あの時から、ずっと……言いたかったこと。
本当はもっと……会えなかった3年分……言いたいことがあったはずなのに、うまく出てきてくれない。
すると、
「オレの方こそ、です。あのときの貴女の言葉に、何度も助けられました」
「え?」
ユメは顔を上げる。
何か、彼に言っただろうか?
彼を助けるような言葉なんて……。
しかし彼は続けて言う。
「貴女にもう一度会うために、なんとか今日まで頑張ることができました」
そう言う彼は、心なしか顔が赤かった。
「名前……」
「え?」
言いにくそうに言う彼。
「あの、名前、教えてもらってもいいですか?」
それだけの言葉にドキリと胸が高鳴る。
「あの時訊けば良かったと……あの後ずっと後悔してて……」
手を首の後ろにやり、照れながら言う彼をユメは大きな瞳で見つめる。
同じことを考えていてくれてたんだ!
「私も……あなたの名前を知りたいと、ずっと思っていました!」
同じように驚いた顔をした彼は、すぐに嬉しそうに笑う。
「オレ、トランクスといいます」