第4章 処遇
遠くから声が聞こえた気がして顔をあげる。広間を仕切る襖の奥からこちらへ駆け寄る女性が三成には見えた。
「……優希、様…?」
頬を紅くし、何かを続けて言いながら自分に走り寄ってくる彼女の顔には怒りも憎しみも、蔑みもなかった。
ただただこれから起こりそうなことに対する恐れとそれを必死になって止めようとする必死さしかなかった。
自分の手元にある懐刀が原因だと少し間をおいたあとに気づいた三成の顔がふにゃり、と柔らかくなっていく。
貴女は、優希さまはやっぱり優しい方だ。
いつものように、貴女は自分のことよりも周りのことばかり気にかける。
そしてそんな貴女を思い浮かべるたびに胸元がじんわりと温かくなっていく自分がいる。
今も、そうだ。
優希さま、と声をかけようとした三成の前で
優希の身体が不自然に歪んだ。
「……え?」