第4章 処遇
「ほう…これは一体どういう趣向だ?」
「光秀!!ちょうどいい、手を貸せ。」
「断る。こんな面白い景色見逃すのはもったいない。」
「お前!!御館様への忠義は少しはないのか!?」
「……なにやってるんですか」
私の考えを代弁するかのように隣で家康さんが呆れたような顔で皆に聞いた。
「小箱ごと広間に持って帰って蓋を開けたとたん、あやつらが逃げおったからな。」
畳の上をずりずり這いながらこちらを見上げる信長様が箸を片手に何故か自信満々に答えた。
信長様の後ろで光秀さんと言い争う秀吉さんの手にはしゃもじと木のおひつ、少し奥のほうで欄間(らんま)のほうへ目をやっている政宗さんは竹ぼうきと……お重の箱?
「あやつらって……あのちっちゃい子達のことですか?」
「それ以外に何がある。お前たちが外れたあと、小箱を持ってこの部屋に来たがその時からガタガタと騒がしくしてたわ。」
それで蓋を開けたらこの有り様よ、と笑う信長様は本当になぜだか楽しそうだった。
普段上座で悠然と構える信長様がまさか自ら率先してちびっこ捜索隊(仮称)になってるとは思わなかった私は目の前の不思議な光景に茫然としていた。
「……ん!?」
キラリと光る何かが奥にいる人のお腹の辺りに運ばれていくのが見えた。淡い紫色と白の着物がその動きに合わせてふわり、と揺れる。
光るなにかが懐刀で、それを青い顔で持つのが三成くんだと理解したのはすぐあとだった。
「早まっちゃ、だめーーーー!!」
考えるよりも速く、足が動いた。