第7章 池田屋事件
その頃四国屋では
ゼェゼェと肩で息をしながら千鶴は四国屋に向かって走る
千鶴「ひ、ひじ・・かたさん・・。ほ、本命は・・・池、田屋・・・」
息をするのに精一杯の口から絞り出すように言葉を紡ぎ出す
言いかける千鶴を手振りで押しとどめ
土方の表情が険しくなった
土方「本命は、あっちか」
土方「斉藤、隊を率いて池田屋に向かうぞ」
土方「千鶴、伝令ご苦労だったな」
千鶴の方に向き労いの言葉を伝える
誉めてもらえるとおもわず驚く
急ぎ大通りを走っていると役人達が列を成して歩いてくる
土方「局長以下我ら新選組一同、池田屋にて御用改めの最中である!」
土方「一切の手出しは無用。
--池田屋には入らないでもらおうか!」
厳しい口調で語られた土方の宣言に役人たちがざわついた
役人「し、しかし、我々にも務めが・・・」
土方「小せぇ旅館に何十にんも入る訳ねぇだろ。乱戦に巻き込まれて死にてぇのか?」
役人「ぐっ・・・」
土方「行くぞ、斉藤!」
一「御意」
役人を残し池田屋に走る
・・・・・・・・・・
土方「近藤さん!!」
近藤「トシか!!1楷は片付いたがまだ2階で総司と萩君が戦っている!」
土方「斉藤!」
一「御意」
2人は急ぎ階段をかけ上がる
金属と金属の触れる鈍い音がする
薄暗い闇の中を白刃がきらめく
風間「貴様の腕もこの程度か」
風間は目を細めると微かに笑う
風間・・・やっぱり強い!総司が押されてる・・・
風間「さて、そろそろ帰らしてもらおう。要らぬ邪魔出てするのであれば容赦はせんぞ」
池田屋の惨状には、全く興味が無いような口振りで言う
総司が向ける敵意も事も無げに受け流している
総司「悪いけど、帰せないんだ。僕たちの敵・・萩の為にも死んでもらわなくちゃ」
総司は柔らかく微笑むと、何の前触れも無い動きで床を蹴った
キィン、ギィンとふたりは再び斬り結ぶ
風間の剣は我流のものだと思う。ただ振り切るだけの刃に対して総司は繊細な技巧で対抗している
剣術の腕で言えば間違いなく総司が優れている
でも・・・
かみ合った剣が離れるとき、体勢を崩したのは総司だった
風間の剣は、早くて重たいのだ。純粋な力勝負では、風間の方に分がある
重たい刀を玩具のように振り回して、総司を圧倒していく