第3章 あなたは誰?
萩「はい。それで父が毎回助けに行くのは大変だから自分で何とかしろと・・・それで縄抜けを覚えました。・・・」
藤堂「よく誘拐されるって・・・おまえいいとこのお嬢さまかなんかかぁ?」
藤堂が萩に話しかける
原田「おまえみてわかんないのかよ?着てるものからしていかにもお嬢さまじゃねえか、平助」
こちらを観察するように見ていた原田が、くっくっと笑いながら口を開いた
萩が着ているのは可愛らしピンクの地に桜文と毬、蝶のシルエットが描かれた振袖、黒地の帯の上には桜の花びらの形の帯締めがついている。長い黒髪は太めの編み込みで桜の髪留めでまとめている。
永倉「だな。みたとうりだ」
その人の向かいに座っていた永倉も、無駄に神妙な面持ちでうなずいている
藤堂「うるさいなあ、おじさん2人は黙ってなよ」
永倉「ふざけんなよ、この坊ちゃまが!俺らにそんな口のきいて良いと思ってんのか?」
原田「平助におじさん呼ばわりされるほど、年食ってねぇよ。新八はともかく、俺はな」
永倉「てめえ・・・。裏切るのか、左之」
藤堂「へへーん。新八っつぁん、図星さされて怒るって大人げねえよなぁ」
彼らは冗談を言いながらも、萩達に好奇を含んだ視線だけはずっと注いでいた
興味を装った彼らの眼差しの裏側に、とても強い敵意を感じる
チラッと隣の千鶴をみるとうつむいた顔色が蒼くなっている
そんな時に、穏やかな声色で話しかけてきた人がいる
???「口が悪い方ばかりで申し訳ありません。あまり、怖がらないでくださいね」
土方「何言ってんだ。一番怖いのはあんただろ、山南さん」
土方は淡い笑みを唇に浮かべて、からかうような口調で言った
その言葉に他の人たちも、うんうんと大きくうなずいている
(へぇー山南さん穏やかそうにみえるのになぁ)
山南「おや、心外ですね。皆さんはともかく、鬼の副長まで何を仰るんです?」
山南は心外だと言いながらも微笑んだままだった
土方も土方で、薄く笑ったまま特に何も言おうとしない
???「トシと山南君は、相変わらず仲がいいなあ」
(これって、仲良しって言うの?微妙にぴりぴりした空気を感じるんだけど・・・)
発言した本人はそうだと信じ切っているみたいだ
近藤「ああ、自己紹介が遅れたな。俺が新選組局長、近藤勇だ」