第3章 気分屋
「へっくしゅん!」
うーん、誰か噂でもしているのかな?
それとも本当に風邪を引いたのかな??
「おっ!あれは!」
見慣れた背中を見つけたので降下して行く。
「おーい!エース!」
「おっ!レティ」
やった!
覚えてくれてた!!
「久しぶり、元気だった?」
「あぁ。お前は相変わらず海賊を逃したりしているのか?」
「うーん。最近は特に捕まえたり逃したりはしてないなー。まぁ、気に入らなかったら捕まえるけど…」
あ、エースを捕まえることは絶対にしないよ!!とつけたしておく。
「ははっ!海軍としてそれもどうかと思うが…」
とか言いながら人の頭をぐりぐりと撫でてくる。
むぅ…子ども扱い。
「で、お前はなんでこんなところにいるんだ?」
近くに海軍戦がなかったから不思議に思ったんだろう。
「ココアが切れてしまったからカカオ島に行く途中なんだ。エースは?」
「俺はある男を追っているんだ」
「男?」
「ティーチって覚えてるか?あいつは掟を破り船を降りた」
ティーチ…。
確か独特の笑い声をしたあの人…
「あいつは悪魔の実欲しさに仲間を殺したんだ。俺は絶対に許さない」
エースの目には怒りがあった。
私は思わずそっとエースを抱きしめていた。
今こうしておかないとエースがどこかへ行ってしまいそうで怖くなった。
「エース…許せないのはわかるけれど絶対に無理はしちゃダメだからね」
「あぁ。じゃあ、俺はそろそろ行くな。また会おうぜレティ」
ゆっくりと離れていったエース。
「元気でね。捕まっちゃダメだよ」
私にはその一言が精一杯だった。
エースと別れた後、私の心の中にはモヤモヤとしたものが残っていた。
「嫌な予感がする」
誰もいない海上で一人つぶやいたその声は風によってさらわれていった。