第9章 忌まわしき日々
『大佐、俺を貴方の側近として側にいさせてください』
…初めてだった。
このスザクという人物は私に“初めて”を贈るのが随分と得意らしい。
『ふっ…スザクは変わり者だね。
私の側にいたいなんて言った奴なんて今まで一人たりともいなかったんだけどな』
けど、不思議と心は満たされていく。
あれ…?
おかしいな、目から涙が溢れてきて全然止まってくれない…。
『つっ…くっ…』
どうしよう…
こんな姿幼い頃ガープに見せた以来誰にも見せたことはなかったのに。
何故か、スザクの前だけでは素直になれそうなきがする。
『大丈夫ですよ』
フワッと何かを頭から掛けられて抱きしめられた。
『ここは俺しかいませんし、誰も見ていません。
思う存分泣いて、今までの事を少しでも流してください。』
『っつ…ふえっ、ふぇぇぇっ…!』
ずっと今まで心の奥に刺さっていた罪悪感などの棘が涙と共に取れていくようで、心が軽くなっていくのが分かった。
その後、ようやく泣き止んだ私は自分の頭から掛けられていたものはスザクのマントだったと初めて知った。
『…えっと、お恥ずかしいところをお見せしました』
チーン!
と鼻をかみながら何となくスザクを見れないでいた。
あれ?ていうか、
よくよく考えたら私って部下の前で思いっきり泣いたってわけだよね?
うわっ!それって上司としてどうなんだろう?
私が1人であたふたしていると、スザクは最終確認をしてきた。
『あの…俺は大佐の側近として側にいさせていただいてもよろしいのですか?』
あ…
そう言えば、返事まだしていなかった。
自分の中ではもうとっくに返事をしたつもりでいたから…。
『うん、勿論。よろしくね、スザク』
私達は握手を交わした。