第9章 忌まわしき日々
けど、私たちは知っている。
この部屋に入ったら最後どちらかが息絶えるまで決して出ることは叶わないということを。
『よく来たなお前ら。さ、時間だ始めてくれよ』
私…
アルトと戦わなくちゃいけないの?
いやだよ…だって、だってアルトは初めてできた大切な人なんだ。
『つっ…!ぐぅっ!!』
アルトはいきなり私に襲いかかってきた。
『ア…ルト…ど、して?』
『どうして?だってこれがここのルールだもん』
だったらそれに従わなきゃね。
アルトはなりふり構わず攻撃を仕掛けてくる。
『つっ…!!い、やだよっ!アルト、こんな事…
わた、し、したく、ないよっ!』
必死に抵抗はするも殆ど皆無に終わる。
『じゃあさ…』
ー私が楽にしてあげるー
その瞬間沸き起こる“死”への恐怖。
『つっ…カマイタチっ!』
能力でなんとかアルトと距離を置く事に成功した。
ここから先は本気で行かないと本当にこの世に存在できなくなってしまう。
私は覚悟を決めるしかなかった。
『風滅!』
圧をかけて動きを止める。
『ふん、甘いよっ!』
だてに古株でいたもんじゃない。
アルトは自力で風圧から逃げた。
『つあっ!』
アルトが私の上にまたがる。
『チェックメイトだね、シロちゃん。
じゃ、そろそろここでバイバイしよっか?』
アルトは持っていた短剣を私の首元に当てた。
『い…やだっ!』
ー神風ー
大きな風がアルトを切り裂いた。
『うあっ…アルトォ!』
私は急いでアルトに駆け寄る。
『アルト…アルト!』
アルトの至る所から出血があり、アルトはなんとか息をしている状態だった。
どうしよう!
自分のやった事なのに後悔したって、自分のせいなのに…⁉︎
『こら…シロちゃん。泣か…ない…の。
こ、こに…入ったから…には…これも、覚…悟の…うちさ…』
『アルトっ!ごめんねぇ…』
泣いたってしょうがないのに涙が止まらない。
『ねぇ…シロちゃん…わ、たし…』
アルトは最後の力を振り絞って抱きしめてきた。
ーシロちゃんのこと大好きだよー
その言葉を最後にアルトは2度と目を覚まさなかった。
『うわぁぁぁんっ!!』
泣いた。
体の水分が全部なくなるんじゃないかってくらいに泣いた。
その日を境に私は独りになった。