第9章 忌まわしき日々
私は返事をする気力がなかったので縦に頷いただけだった。
『じゃあ、ちよっと待っててね』
一言そう言って部屋から出て行ってしまった。
一気に押し寄せてくる開放感。
またすぐに戻ってくるとは分かっていたがそれでも少し気が楽になった。
次に戻ってきた時、私をこの実験室に連れてきた男も入ってきた。
何やら手には果物らしきものがのったお皿を持っていた。
『目が覚めたらしいな。これが最後だ食え』
渡されたのは男が持っていたお皿。
色は真っ白で果物なのかどうかも怪しいものだった。
私は恐る恐るだが言われた通りその果物を口の中に運ぶ。
『ゔっ……っ!!』
衝撃の不味さに思わず吐きそうになる。
『吐くな。全部食うんだ』
カチャリと音がしたのでその方を向くと男はこっちに拳銃を向けてきていた。
『ゔっ…』
途中で何回も吐きそうになるも必死でこらえやっとの思いで食べきった。
それを見届けた男は拳銃を下ろした。
『拒絶反応なし。実験は成功だな』
そう言った。
成功…?
成功したんだ…そうか、良かった。
『お前が今食ったのは“悪魔の実”と言われているものだ。そいつを食べれば誰でも一つだけ特別な能力が身につく。
お前が食べたものは政府がDr.ベガパンクに作らせたメモメモの実というものだ』
そこから一気に大量の事を教えられた。
メモメモの実は他の悪魔の実を記憶して自分で使えるようになるということ。
記憶する事に限度がないということ。
悪魔の実を食べたものは海に嫌われカナヅチになるということ。
これから先はとある施設に入って生きていくということ。
主なことはこの4つのことだった。
『じゃあ、ぼちぼち行くかな。おら、行くぞ』
次に連れた行かれた場所はひとつの施設だった。
おそらくここが男の言っていた施設なのだろう。
『さっきも言ったが、ここが今日からお前が住む施設だ。』
男はチャイムを鳴らす。
すると中から小太りの男が出てくる。
『お、新入りか?』
『例の子どもだ』
『ああ、こいつが』
ニタリと笑いながら私を舐め回すような目で見てきた。
背筋から嫌な汗が通る。