第2章 遠い日の記憶
ふうん、と言って私はおばあちゃんを見つめた。私と同じ名前のお姫様。「あいする人」を見つけたすごい人。会ったこともないその人の姿を想像しながら私はもう一回おばあちゃんに聞いてみた。
「ねえ、私もおひめさまみたいに心がきれいでやさしい、まっすぐな人になったらいつかあえるかな。あいするひとに」
私の問いにまた驚いた顔をしたおばあちゃん。でもそれは一瞬だった。前よりも嬉しそうに微笑むと手櫛ですいてくれた。
「えぇ、きっと会えるわ。」
じゃあ私もおひめさまみたいになる!そういって私はおばあちゃんの膝の上でくるりと体勢を変えるとおばあちゃんに抱きついた。おばあちゃんも抱き締めてくれる。
「優希はお姫様みたいになれるかしら。」
「なれるよ、ぜったいになるもん。私はおひめさまみたいになるもん!」
そんな風に言い合いながらぎゅっと抱きつくとお香の香りがふわりとほんの少し強く薫った。
「そうだわ、そのお姫様の絵があるけど見てみる?」
「見てみる!おばあちゃん早く見せて!」
きっと凄く顔をキラキラさせてはやく見せてー!とねだった私を抱えて膝の上から縁側に置くとおばあちゃんは立ち上がった。部屋に向かって歩いていくおばあちゃんのあとに私はついていった。まだ見ぬお姫様に思いを寄せながら。