第19章 十四松の願い
その時だ。
「動くな!」と言う大きな声がキッチンに響き渡って、イチの言葉は掻き消されてしまった。
ドサっと主人の腕が力無く床にうな垂れた。
「お、お前は!」
そう叫んだ警察官が懐中電灯でイチの顔を照らした。
僕は今日、お手伝いさんたちがしていた話を思い出してゾッとした。
その時には遅かった。
パーーンという乾いた音が聞こえて、イチの体が後方に吹き飛んだ。
床に横たわったイチの頭部の下から黒い何かが流れ出す。
僕は激昂して、銃を放った警察官に飛びかかった。
そして、虚しくもたどり着く前に首を撃ち抜かれてその場に崩れ落ちた。
霞んで行く視界の中折り重なって涙を流し眠る2人の主人。
これが僕たちが六つ子として生まれる前のお話だ。
だから、夢で会って教えてあげたかったんだ。
来世で結ばれる事を。
その夢が叶って本当に幸せだった。
2人も涙を流して喜んでくれた。
次はどの兄さんたちに会えるかな?