第19章 十四松の願い
十四松side
あったかーいコタツの中で6人揃ってうとうとしてたら誰かに足を蹴られて、現実世界に引き戻された。
僕はコタツの中を覗き込んで、犯人を見極めて仕返しをしてやった。
「あ゛い゛だぁ!!」というおそ松兄さんの声と同時にコタツが大きく持ち上がって冷気が一気に温かい空気を押し出してしまう。
「ちょっと!おそ松兄さん、もう少しで眠れそうだったのにやめてくれな〜い?コタツの中冷えちゃったじゃん!」
「文句言うなら俺を蹴ったやつに言えよ!」
「あーもー、うるっさいなぁ!元旦くらい静かにできないの⁉︎」
次から次に兄弟が目を覚まして口喧嘩が始まって、僕達はとうとう寝正月を諦めて退屈な正月の特番を見ながらみかんを貪ることにした。
しばらくムスッとして無言でみかんを食べていたら、一松兄さんのために次のみかんに手を伸ばしたカラ松兄さんの腕を一松兄さんが掴んだ。
「餅食べたい」
「オーケー、ハニー」
幸せそうにそう言って立ち上がったカラ松兄さんに無情にも舌打ちで返す一松兄さんのほっぺはしっかり色づいている。
それを見ていたトッティーが大袈裟なため息とともに声を荒げた。
「あー、ヤダヤダ、なんで正月早々兄弟のイチャついてる姿見なきゃなんないの?そういうのは2人きりの時にやってくんなーい?」
「はっ!?誰が?僕、クソ松のことパシっただけだけど」
「あー、はいはい」と明らかに納得していない顔のトッティーをまーまーと宥めるチョロ松兄さん。
すると今度はニタニタとした顔でおそ松兄さんが、さっきまでカラ松兄さんが座っていた場所へ移動する。
「何?」と不審な目を向ける一松兄さんの肩に腕を回したおそ松兄さんは、にやけた顔はそのままに質問した。
「一松君は、願い事は他人に話したら叶わなくなるとかそんな迷信信じてないよね〜?って言うか、そもそも願い事が叶うとか信じてないっしょ?」
「だったら何?」
「今朝の初詣で何をお願いしたのかお兄ちゃんに教えて?」
すると顔を真っ赤にした一松兄さんは「何で教えなきゃならないの!」と勢いよく立ち上がった。
そしてハッとした顔をして慌てて坐り直すと、冷静を装って
「信じてないから願い事とかしてない」
と言った。
すると「あれれ〜、おかしいなぁ〜」とチョロ松兄さん。
チョロ松兄さんの顔は幼少期を思い出させる悪い顔をしている。