第18章 二人きりのクリスマス(クリスマス)
うまいうまいと普段甘いものなんか食べないくせにケーキにがっつくカラ松は口の周りをガキみたいにクリームで真っ白にして言う。
「確かに!これは早速胃袋を鷲掴みされたようだ!」
「へへ、無理しなくていいよ…俺は切り分けただけだし」
「いや、一松が切り分けてくれたから美味いんだ」
そう言って最後の一口をはむっと口に入れてセラヴィ〜と目尻を垂れさせた。
全て食べきるのは無理かと思われたケーキは2人で半分ずつ綺麗に平らげた。
苦しくてベッドに仰向けに寝転がり、ゲフッとゲップをする俺をニコニコと見つめるカラ松と目が合う。
「だいぶ苦しそうだな、大丈夫か?」
「まぁ、家でも結構食べたからね…だけど、それはお前も一緒でしょ?甘い物好きの俺がこんななのに何でそんなに余裕なの?」
「ん〜?言っただろう?一松の切ってくれたケーキだから絶品だったのさ」
そう言ってまたうっとりとした顔をしてケーキの味を思い出しているようだ。
俺は照れ隠しに「けっ」と舌打ちをしてカラ松に背を向ける。
すると今度は大きな窓が目に入る。
安いホテルだ、大した眺めではないけれどいつの間にやら降り始めた雪が窓ガラスにあたっては溶けて出来た小さな雫がネオンを反射させてとても綺麗だ。
カラ松はずっとこちらを向いていたのに今気づいたようで「雪が降ってるじゃないか」と言って立ち上がったようだ。
すぐにベッドのスプリングの音が背後でして、フワッと何かが俺の体を覆った。
頭は動かさずに視線だけ自分の体に向けると紺色の布団が俺の体を覆っていて、俺がカラ松にやったクリスマスプレゼントだと言うことはすぐにわかった。
「俺に温めて欲しいんだろう?」
「そんなこと言ってない」
「う〜ん?」
カラ松は、フッと笑って静かに俺を抱きしめた。
心地よい温もりと満腹感に瞼が重くなる。
俺はそれを堪えてカラ松の方へと向きを変えた。
「ね、ケーキより甘いの食べたくない?」
「い、一松⁉︎」
「ふひっ、何だよそのツラ」
カラ松は口をパクパクさせた後、額に手を当てて大きなため息を吐くと俺の両肩を強く掴んだ。
「お前が苦しそうだから俺は我慢するつもりでいたんだぞ?どうなっても知らないからな!」
「好きにしなよ、めちゃくちゃにされる覚悟はできてるから」
「お前ってやつは…」と小さく呟くとカラ松の瞳は違う色を帯びた。