第14章 熱に浮かされて(バイト編)【紅松】
そのうち、炬燵は暖かくなってきて、その心地よさにうとうととしていると玄関から騒がしい声が聞こえてくる。
銭湯から帰ってきた兄弟の声だ。
僕は頭だけ襖の方に向け、襖が開くと同時に「お帰り」と兄弟を迎えた。
「おー、トド松やっと起きたの?」
おそ松兄さんが定位置である僕の隣に座り込む。
「うんって、おそ松兄さんの足つっめたーい!!近づけないで!!」
炬燵に入ってきたおそ松兄さんの足はキンキンに冷えていた。
「そんな意地悪言わないであっためてよ~、今晩すっげー寒くってさぁ~」
「トド松、今日はしっかり防寒してバイト行った方がいいよ」
チョロ松兄さんが僕の心配をしてくれているけどおそ松兄さんがしつこく足を僕の足にくっつけてくるからギャーギャー言い合っててそれどころじゃなかった。
そしたら、今度は反対側から一松兄さんが同じく冷たい足を僕にくっつけてくる。
僕は熱が出ていることも忘れてギャーギャーやりあっていた。
一松兄さん、待っててね・・・
明日には一松兄さんのお友達の治療費を準備できるから!
横でふへっと笑っている一松兄さんの笑顔にそう誓って、気合を入れた。
夕飯はあまり食欲はなかったけど食べないと動けないしと思って少し無理をして食べた。
それでもいつもよりは少なくて、案の定一松兄さんに突っ込まれた。
「トド松、具合でも悪いの?」
「ん、何で?」
突っ込まれることは想定内だったので自然な流れでそう返すと、想定通りの返答が来る。
「食欲ないみたいだから」
「うん、お昼ご飯食べてなかったからお腹すいちゃって・・・さっきクロワッサン食べちゃったんだよね」
そう言って眉を下げて見せると納得したようだった。
一松兄さんと同じく食欲がないと感じていたのかチョロ松兄さんも安心したような顔をしていた。
そうやって夕食の時間を切り抜けた僕は、そのまま炬燵に横になってテレビを見る振りをしながらバイトの時間まで体を休めた。
そしてみんなが寝静まった頃、僕は一人家を出た。
外は兄さん達が言っていた通り一段と冷えていた。
コンビニに着くと、自分のロッカーに荷物を突っ込み、エプロンを着用する。
寒い中歩いたおかげか熱っぽさは少し薄れていて、楽になっていた。
僕は休憩室の椅子に座り、開始時間まですっかり弄る時間の減ってしまったスマホを開き、画面に指を滑らせた。