第11章 別れ(モブサイコ編)
チョロ松side
僕は一松を屋上に連れ出した。
僕達が高木さんのアパートに駆け付けた時にそんな気はしていたけどやはり何かあったんだろうな。
そうじゃない限り嫌いだとか別れるだとか言うわけがない。
そして嫌いだなんてのは嘘だって僕は・・・否、兄弟全員気づいているだろう。
だって・・・
一松が人前でこんなに涙を流しているんだから。
しばらく沈黙が続いた。
その沈黙を破ったのは僕だ。
「一松、何があったのか僕に話してよ?・・・力になりたいんだ」
僕達の仲だろう?と僕は一松の両肩を優しくつかんで俯く顔を覗き込んだ。
兄弟の真ん中に挟まれた僕達二人。
その立ち位置だからこそ抱える悩みを僕達は共有してきた。
僕は一松になら安心して悩みを打ち明けられた。
一松も僕の事をそう思ってくれていると信じて問いかけた。
一松は涙を拭うと僕に背を向けて安全柵にもたれかかった。
そして遠くを見つめながら家を出てから何が起きたのかを話し始めた。
ナイフを向けられたこと、高木にストーカーされていたこと、媚薬を飲まされたこと、カラ松が目の前で刺された事、本能に負けて手負いのカラ松とヤった事。
正直どれも衝撃的で、同時にその時の事を思うと気が付けば僕は一松を後ろから抱きしめていた。
「怖かったよね・・・辛かったよね・・・」
「チョロ松兄さん、苦しいよ」
僕はハッとして一松を解放した。
「一松は怪我してるカラ松とセックスしちゃったことを悔やんでるの?」
「だって、下手したら死んでたんだよ?」
「そうだね」
僕はそう答えるしかなかった。
だってそれは本当の事だから。
でも、僕にはわかる。
その時のカラ松の考えていた事。
だって、僕はあのバカな二人の兄の背中を見て育ってきたんだから。
だから僕がしっかりしなくちゃって思って僕は変わったんだから。
一松は黙ったままの僕に続ける。
「俺の所為で猫とカラ松は死にかけた・・・これ以上傷つけたくない」
「だから別れるの?」
一松は頷いた。
僕は一松の肩を掴んで振り向かせる。
「一松っ!それは違うだろ!?傷つけないためじゃない、自分が傷つきたくないからじゃないか!!」