第10章 歪み(モブサイコ編)
一松side
俺は今、病院に来ている。
別に病気したわけでも怪我したわけでもない。
というかここで人は診てもらえない。
ここは動物病院だから。
話は一時間ほど遡った午前九時。
朝食を食べ終え二階へ上がろうとした時だった。
玄関が勢いよく開いて、十四松がわーわーと騒いでいる。
「十四松、そんなに大きな声で言わなくても聞こえてるから、近所迷惑でs-----っ!!」
玄関に顔を出した俺は絶句した。
十四松の黄色いユニフォームが赤く染まっている。
別に十四松が怪我したわけじゃない。
赤く染めるのは十四松の胸に抱かれる猫。
僕の一番の親友。
エスパーにゃんこだった。
「おいっ、何があったんだよ十四松!?」
俺は駆け寄り、震える手で猫を受け取って怪我の具合を確かめるため改めて猫の姿を覗き込む。
真っ赤に染まった小さな体。
傷はどこについてるかよくわからない。
ただ、この小さな体からこれほどの血を抜いたらと考えてその場に崩れ落ちた。
すると、誰かが俺の体を支える。
「何かあったのか・・・って、一松!大丈夫か!?・・・このキャットは一松のベストフレンドじゃないか!!」
「カラ松兄さんっ!家の前に倒れてたんだ!そんな事より早く病院に連れて行かなくちゃ!」
「そうだな、一松立てるか!?早く病院に連れて行こう!一松っおい!しかっかりしろ!!」
耳元でカラ松の声が響いているけど俺の体は動かなかった。
俺はあの日の事を思い出していた。
初めて友達を失ったあの日の事を・・・