第2章 ゼロ・ニ
モビルワーカーの残骸。
バラバラになった部品が、焼けた地面に墓石のごとく突き刺さっている。
鉄と炭素の合金は、永遠に朽ちることはない。それでも錆びるのは、もっぱら酸素と水のせいだ。人間が生きるために必要なもの。それがなければ、ここは銀の美しい集団墓地になっただろう。
わたしはそんなことを考えながら、墓のひとつひとつに花を添えていた。眠っているのは、CGSで働く前の仲間たちだ。ダンジと同じように、硬いコックピットの中で死んだ少年兵。寒くなかったかな、と焼け残ったシートをぼんやり眺めていると、誰かの歩いてくる音が聞こえた。振り向くと、先生だった。
「お前もいずれああなるよ」
「コックピットの中で?」
「まさか。墓石の方だよ」
と先生は笑った。わたしは頷いて、
「あぁ、そうでした」
左の胸に手を当てる。心臓が、脈打つたびにキリキリ悲鳴をあげていた。バルブが外れかかっているのだ。血管と装置を繋ぐ小さなバルブ。半分が機械の心臓を動かす大事な部品。それが古びて弾けそうになっている音だ。先生はわたしを哀れむように見て、
「4年前、君が失ったのは肌だけじゃない。心臓の半分もだ。そのバルブが止まった時、君の命も尽きる」
「そうですね」
「もう楽になってもいいんだぞ」
「でも先生、」
バレット、という声。誰かが自分を呼んでいる。地平線の上で手を振っているオルガを見た。わたしはそこに向かって走る。ふと後ろを振り返ると、先生が笑っていた。