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ブラック・リード (鉄血のオルフェンズ)

第1章 ゼロ・ワン


これは一体、どういうことだろう。
目を覚ますと、初めに真っ白な天井が見えた。それから酸素マスクと、点滴のボトルにも気がついた。顔の左側で、ピッピッピッ、という心拍計の音がしている。見たところ、ここは病室のようだった。けれど入院した覚えは全くない。
だんだん息苦しくなってきた。吸っても吸っても酸素が足りないような感じ。吸入のタイミングが合ってないんだろう。マスクを外してそとの空気を吸うと、少し落ち着いた。
「やっと目覚めたか」
見れば、白衣を着た先生がベット脇に立っていた。朝霧・バレット先生。無茶な治療と、ぼったくりで儲けている火星の闇医者。私の命の恩人だ。けれどもう、この世にはいない。
「起き上がれるか」
わたしは頷き、身体を起こしてみた。すると頭が一瞬フラッとして、スーっと闇に意識が呑まれそうになる。乗り物酔いに似た感じ、思わず両手で顔を覆った。その時、つんとくる臭いが鼻を刺す。よく知った消毒液の臭い。不思議に思って目を開けると、傷だらけの手のひらがあった。
「先生、わたしは一体…」
「モビルスーツに乗り物ごと潰されたんだ。腕をみせて」
「あぁ、そっか」
これは夢だ。死んだはずの先生がここにいるのも、4年前の話が出てくるのも。
わたしは先生の言う通り、両腕を前に出した。包帯がぐるぐる巻きで、ひょろくてミイラの腕みたいだった。まだ塞がっていない傷もあり、白い布にあちこち真っ赤なシミを作っている。先生が包帯をほどくと、その下から何とも厳つい肌が顔を出した。ミミズ腫れや火傷の痕がずらり。ケロイドになって盛り上がっているものもある。もう痛みはしないけれど、それでも雨が降れば疼き出しそうだった。
「腕はどうしても痕が残ってしまった。すまない」
先生の手に筋が走る。わたしは首をかしげ、
「謝ることなんてないです。この方が男らしくていい」
「でも君は女の子だ」
「先生。火星は女の子だと生きづらいんです」
「けれど、それは隠しておけないよ」
自分の身体を見る。それには丸みと膨らみがしっかりあって、もはやどうしようもないことに気づく。
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