第1章 壱ノ華
✱ ✱ ✱ ✱ ✱
という事で、僕は今、ウィスタリア城の中をジルという男の人と一緒に歩いていた。
「先程、掲示板の方に出したばかりだというのに、お早いご決断をされたんですね?」
『はい。僕、両親がいないもので。』
「そうでしたか、それは失礼な事を聞きましたね。
申し訳ございません。」
いえ。と答えるとジルはにっこりと笑顔を見せ、更に城の奥へと歩を進めていく。
正直、外から見ただけでは中がこんなにも広くなっているとは思わないだろう。しかも、外装にも劣らない程、内装をきらきらと輝いているように感じた。そして、天井を見ながら歩いていると、いきなり壁が前を塞いできた。
『ぶへっ!』
「やれやれ、大丈夫ですか?
男性にしては華奢に見えますし、お気をつけくださいね?」
『は、はぃ…。』
曲がり角でそのまま前に進み続けてしまったらしい。
突き当たりの壁に顔面を強打していた。
額を擦りながら涙目でジルに追いつくと、ふと影がさして、今度は何…?と上を見上げる。
見上げた先にはジルの整った顔が迫っていて、心臓が高鳴った。
『あ、ぁぁあ、あの!
ち、近っ!!!』
「あぁ、すみません。
額、出血されているのかと思いまして。
大丈夫なようですね。
では、行きましょう。もうすぐそこです。」
顔がボッと熱くなり、手で隠しながらジルの後ろを付いていく。