第1章 壱ノ華
服をあげる、と言い張るマリアの家で綺麗な洋服に身を包み、僕は目を見張る。
『待って、なんでこの格好?』
僕がそんな事を言いたくなるのも頷けるだろう。
だって、僕が今身に付けている物はしっかり男物の服だ。
確か、条件には女でも良いと書いてあったはず…。
「何言ってるの!女性でも可ってことは、必ずしもそこで働けるという訳ではないのよ?だ、か、ら、こうして男の格好をしてれば、少しでも有利になるわ!」
『そ、そういうもの??』
「そ!まぁ、そんなのはイイとして……。
ハルカ、かわいいぃ!!
なんて可愛らしいの!
男モノを着てもこの可愛らしさが残るなんて…、最高ね!!」
いつものようにマリアがはぁっ…はぁ…と荒い息を吐き出しながら、赤みを帯びた顔を近付けてくる。
可愛い、と言われて嬉しくないわけでは無いがこの場合、男らしくなくてはいけないのでは……?と、思う僕。まぁ、この方が働ける確率が上がるのであれば、致し方ないと自分に言い聞かせる。
「そもそも、もうウィスタリア城に行ってもいいのか?」
『そうね、記載されていなかったし、
いいんじゃないかしら?』
息を整えたマリアが僕の髪の毛を櫛で梳かしながら、答える。
よし!という声と共に立ち上がると、マリアがまた手を握り「じゃあ、送っていくわ!」と声を張り上げる。