With Live Planet _この星で生きる_
第4章 戦闘士訓練開始
ゆっくりとした動作で、自分の頬に手をやりその手を見つめていた。
「あ……」
どうやら頬が切れたようだ。
今の斬撃をその傷だけで済ますとは。
「…はっ、あはは、あははは」
私が感心していると彼女は肩を震わせながら笑い始めた。
「何が…可笑しいのですか⁇」
私が問うと、笑い声が止む。
戦場の静寂ほど怖いものはない。
うつむいてた顔を上げ、私を見る。
「っ………」
なんとも言えぬ狂気じみた瞳。
歪む唇、頬からは血が流れている。
久しぶりにこんな感情を抱いた。
”怖い”という恐怖を。
「ねぇ、ウリエルさん」
耳にまとわりつく声。
最初に会った時の声とは全く違う。
「ーーー死ね」
その言葉を理解する前に彼女の剣先は一寸狂う事なく僕の心臓あたりにあった。
それを振りだしする勢いで後ろに避け、
回避する事に成功する。
「うぐっぁ」
回避と言ってもそんなかっこいいものではない。
後ろに倒れこむ事でなんとか避けれた。
明らかにスピードも目つきも全てが違う。
攻撃は止まず、次から次へとあり得ない角度で剣が移動する。
全てを止めきれず、ところどころは間違いなく切れてるであろう。
黒髪が舞い上がる中、合間に見える
ー凄惨な笑み。
「お強いですね…」
無理して戯言をはいてみる。
「お褒めいただき…光栄です」
無駄口を叩く時間も惜しいほどに、
斬りかかってくる。
もう斬撃など生易しい動きではない。
私の体を狙い、剣を突き、叩く。
あからさまな打撃は地面をえぐっている。
一応私の方も剣を振るうが、研ぎ澄まされた彼女の神経の前には、スローモーションだろう。
ーガキンッッ
この音の次に聞いたのは刃が地面に落ちる音だった。
「これは…私の勝ちですか?」
彼女の剣には刃がない。
いま思えばあの斬撃、打撃に耐えられるほど高性能ではない量産型の剣。
剣だった棒を捨て、彼女はこちらを見据える。
ー未だ殺意のこもった目で。
「うらぁぁっぁ‼︎」
腹をめがけて、鉛のような蹴りが繰り出される。