第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
「さっさと観念しろ」
そう言うと、精液で汚れた右手でクレイオの頬を撫でる。
それはまるで、自分の匂いを擦りつけたがっているようにも見える。
さらに親指で唇をなぞって軽く口を開けさせると、舐めろとばかりに指を咥えさせた。
「さっきお前はおれに“どうかしてる”って言ったが・・・」
濃くて苦い味が口内に広がる。
でも・・・不思議と嫌じゃないのが、嫌で仕方がない。
「確かに、おれはどうかしてるかもな」
お前におれの匂いをつけておきたくて仕方ない。
こいつはおれのものだ、と主張したくて仕方ない。
そのためなら、唾液でもいい、もう一度射精してもいい、彼女に自分の分泌物を擦りつけたい。
「もし少しでも怖いと思ったら・・・逃げるのは早い方がいい。おれがまだ理性を保っていられるうちにな」
そう言ってゾロは微笑んだ。
もちろん、逃がす気はさらさらないが。
するとクレイオも微笑みながらゾロを見上げた。
「ご忠告はありがたいけれど、逃げるつもりはない」
貴方に抱かれるわけにはいかない。
“今”はまだ。
「でも、そう簡単に観念するつもりもないから」
貴方との出会いは神の意志なのか、それとも悪魔の意志なのか。
いずれにせよ・・・
衝動的な欲望が生み出すのは、悲劇しかない事を知っている。
「じゃあ、せいぜい神に祈っておくんだな。気づいたらおれに喰われてたってことにならねェようによ」
獣は悪魔のような笑みを浮かべると、早く降参しろと言いたげにクレイオの唇にキスを落とした。