第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
その日を境に、ミホークは再びゾロに稽古をつけるようになった。
毎日、まともに歩くことができないほど疲弊して帰ってくる姿を見れば、その修行が過酷さの極みであることは分かる。
だが、ゾロは文句を言うどころか、嬉しそうですらあった。
城に戻るとペローナに傷の手当をしてもらい、朝になればクレイオの朝食をかきこみ、いそいそと刀を持って出ていく日々。
「アイツは根っからの修行バカだ。長生きしねェな」
洗濯した大量の包帯を物干し竿に干すクレイオの後ろで、ペローナが暇そうに背伸びをしながら言った。
「毎日毎日、怪我の手当をする方の身にもなって欲しい」
「ミホークは手加減しないものね。ペローナがいなければ、ゾロはとっくに出血多量で死んでいたんじゃない」
「別に私は、召使が減ったら嫌だから手当をしてやってるだけだ」
拗ねたように口を尖らすペローナだが、彼女なりにゾロを心配しているのだろう。
数日前、深夜になっても帰ってこなかった時は、ゴースト達に捜索に行かせていた。
あの時は道に迷ったあげく、城とは反対側の森の出口のところで失血と空腹のために行き倒れていたゾロ。
・・・たしかに、長生きはしないタイプなのかもしれない。
クレイオはおかしそうに笑うと、まるで短冊のように揺れている真っ白な包帯を見つめた。
ヒラヒラと風に揺れる白い細布。
ヒラヒラと・・・
風に揺れる・・・布・・・
「・・・クレイオ?」
すぐそばにいるはずのペローナの声が、やけに遠くで聞こえると思った、その時。
耳の奥で、あるはずのない恐ろしい叫び声が響いた。