第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
三刀流を究める。
天国にいる親友のところまでこの名が届くよう、世界一の剣豪という称号を手に入れてみせる。
それは彼にとって夢であることを遥かに越え、今生で果たすべき使命となっていた。
“おれには野望がある!!! 世界一の剣豪になる事だ!!!”
“悪名だろうが何だろうが、おれの名を世界中に轟かせてやる!!!”
親友への誓いのため、亡霊に憑りつかれたかのごとく刀を振るう彼を怖がる者は少なくなかった。
剣豪と言えば聞こえはいい。
だが、結局は刀で人を斬り続ける殺戮者ではないか。
金のために海賊を狩り、世界の法に従おうとせず、三本の刀を腰に差して歩くあの男はあまりにも危険すぎる。
“剣士として最強を目指すと決めた時から、命なんてとうに捨ててる”
鮮やかな緑色の髪に、猛獣のような瞳。
鍛錬に鍛錬を重ねた鋼の肉体で狙うは、世界最強の剣士ジュラキュール・ミホークの首。
自ら修羅道を選ばんとする彼の目の前に、ある日一人の男が現れた。
“いいねえ、世界一の剣豪!! 海賊王の仲間ならそれくらいなって貰わないとおれが困る!!!”
それまで自分の野望のためだけに生きていた男が、他人の野望のために命を捨てようとする。
海賊狩りから海賊となった瞬間、彼の使命が少しずつ変わっていった。
“おれに剣を教えてくれ!!!”
ジュラキュール・ミホークの首を狩る為ではなく。
“お前を越える為・・・!!!”
“新世界”を駆け上がり、仲間の野望を叶えるため───
厚い黒雲に覆われたクライガナ島で一人、ロロノア・ゾロは恥とプライドを捨て、倒すと誓ったはずの大剣豪に土下座をしていた。