第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
「空が・・・堕ちていく・・・」
在りし日のドフラミンゴの笑顔が目に浮かぶ。
“この美しい空が壊れていく様はもっと美しいぞ”
黒雲の合間から、傷ついた国を癒すべく差し込む太陽。
その幾筋もの光は、最後まで生きることを諦めなかったドレスローザの国民一人一人を祝福しているようだった。
「ああ・・・!!」
“いずれ必ず、世界が崩れていく様をお前に見せてやるよ”
そのあまりの美しさに、瓦礫の上に崩れ落ち、咽び泣くことしかできない。
ドフラミンゴが見せたがっていた、“破壊”。
それは彼の手によるものではなかったが、崩壊していく国は歓喜に満ち溢れていた。
切り刻まれた街は、もはや何人たりとも操られることのない自由の地。
「貴方の言う通り・・・本当に美しい・・・」
この地を自分の足で歩いていくのは、決して簡単ではない。
“自分の羽で空を飛んだ瞬間、そいつは周りにあらゆる敵がいることを知る。他の動物に捕食されるかもしれねェ、人間の娯楽のために銃で撃たれるかもしれねェ・・・もしかしたら、雷がその羽を貫くかもしれねェ・・・”
それでも───
“さようなら、クレイオ様。どうか、生きることに負けないでください”
「自分の羽で空を飛び、自分の足で大地を歩いていくわ」
クレイオは背後に広がる自由の地を見据えた。
ドフラミンゴからもらった宝石の数々はもう無い。
たった一つ、この胸に光る『人魚の涙』を除いて・・・
着の身着のまま、無一文。
ここからクレイオにとって、本当の人生が始まる。
果てしなく続く空。
差し込む太陽の光は、クレイオが歩むべく道を真っ直ぐと照らしていた。