第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
王宮に隣接されている円形闘技場、コリーダコロシアムで行われる決闘は、市民の最大の娯楽。
リク王が治めていた頃は、三千戦全勝の伝説を残したキュロスなど剣闘士達が、純粋に格闘技術を競う場だった。
しかし、ドフラミンゴが王座についてからは生死で勝敗を決するようになり、剣闘士の技の美しさよりも、殺し合いそのものが人々を熱狂させるようになっていた。
特にこの日は賞品である“メラメラの実”を狙って、各国より猛者達が集まっている。
「謎の剣闘士!! ルーシー強し!!」
実況中継のすぐ隣にある国王専用の特等席。
剣闘士の表情まで見えるその席で、クレイオは一人の老人に見入っていた。
否、白いひげを蓄えているというだけで、実際は二十歳そこそこだろうルーシーという名の剣闘士は、殺気立ったライバル達とは違い、天真爛漫に競技場を駆け回っている。
闘牛すらも味方にしてしまう彼の戦いぶりは、クレイオだけでなく会場にいた全員を魅了していた。
「ルーシー・・・」
なんという剣闘士だろう。
ドフラミンゴに連れられて何度となくコロシアムを見物してきたが、“人殺し”ではなく“戦う姿”で観客を魅了する剣闘士を初めて見た。
きっと、神聖とされていた頃のコロシアムは、このような場だったのかもしれない。
───ドフラミンゴが彼を見たら何て言うかしら・・・
「クレイオの姐さん?」
付き人兼見張りとして一緒に観戦していたドンキホーテファミリーの下っ端が、クレイオの表情に気づき、驚いたように目を丸くした。
「もし、ドフラミンゴとルーシーが決闘することになったら・・・私は応援する人を間違えてしまうかもしれないわね」
「・・・!」
下っ端のファミリーには会話をするどころか、その姿を目にする機会さえ滅多にない国王の愛妾。
その彼女が微笑んでいる。
彼は舞い上がりそうになるのを何とか堪えながら、注目の的となっているルーシーを見た。