第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
ようやくドフラミンゴに解放してもらうと、窓からは夜空に浮かんだ真っ白な月が見えていた。
クレイオとグラディウスの関係を疑っていたせいか、国王はいつにも増して荒々しかった。
自分の半分しかないクレイオの身体を蹂躙し、快楽なのか苦痛なのか分からないほどの刺激を与える。
息も絶え絶えになっている所を見るや、長い舌を口紅が剥がれ落ちた唇の間に差し込み、気道を塞ぐように口内を掻き回した。
このまま窒息死させることだってできるんだ。
この玩具の所有者は誰か、それを知らしめるかのように、クレイオが救いを求めてドフラミンゴに抱きつくまで苦しみを与え続けた。
コツ・・・コツ・・・と、おぼつかない足音を大理石の廊下に響かせながら歩いていると、その先の暗闇の中に誰かが立っているのが見えた。
それは、黒いコートを着た青灰色の髪の男。
「・・・グラディウス・・・?」
クレイオが小さな声で呟くと、グラディウスは黙ったままジッとこちらを見つめてきた。
ゴーグルのせいで表情は見えないが、相変わらずピリピリとした空気を纏っている。
「こんな所で何をしているの? もしかして、私がちゃんと部屋に帰るよう、見張るつもり?」
「・・・・・・・・・・・・」
すると、グラディウスは腹の底から絞り出したような声を漏らした。
「───何故、おれを助けた?」
ドフラミンゴの部屋を出てから、何時間もここでクレイオを待っていた。
この質問をする、ただそれだけのために。
「なんのこと?」
「とぼけるな・・・あの時、若はおれを殺す気だった」
“どうだ、このままグラディウスとセックスしてみろ”
もしあの時、王の命令に従っていたら、確実に自分は殺されていた。
そうだと分かっていても、グラディウスがドフラミンゴの言葉に逆らえるわけがない。
“───グラディウスを殺す気?”
あの時、クレイオが王を宥めていなかったら・・・