第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
物心ついた時から、自分は“玩具”だった。
この世界には、天竜人と従者と奴隷の三種類の人間しかいないと思っていた。
「フッフッフッ・・・どうした、なぜ啼かない?」
蕾を左右に広げて押し入ってくる長い指の感触に、眉をひそめながら耐える。
声を出すことを禁じられているわけではないのに堪えてしまうのは、その指が今まで若い女達を悦ばせていたことを知っているから。
「何を怒っている?」
「怒ってはいないわ」
「ならば、なぜ素直に善がらない?」
貴方の指だけで喘いでしまったら、私も国王の妃になることを虎視眈々と狙っている者達と同じになってしまう。
いや・・・それ以下か。
目的もなく貴方に弄ばれる私は、ただの性奴隷。
「どうした、随分と機嫌が悪ィじゃねェか」
愛撫から逃げるように顔を背けられても、ドフラミンゴは余裕の笑みを崩さない。
彼女が拒否をしようがしまいが、これから営む行為に変わりはない。
二人の間に、クレイオの意思など必要ないのだ。
「そうだ、これが済んだらコロシアムを開くか。見込みのありそうな剣闘士がいるとディアマンテが言っていたからな・・・真っ赤に飛び散る血を見たらお前の機嫌も少しは直るだろう」
「・・・・・・・・・・・・」
「どの剣闘士と闘わせようか・・・それとも、猛獣がいいか? フッフッフッ、お前の好きな方を選べ」
コロシアムとは、円形競技場で行われる見世物のこと。
ここで繰り広げられる剣闘士の死闘は、ドレスローザの一番の娯楽だ。
人が傷つき、死んでいく様を見て客達は興奮し、熱狂する。
「・・・なら、国王様自ら剣を持ったらどう?」
「なんだと?」
「久しぶりに人を殺す貴方が見てみたいと言ったら、貴方は見世物になってくれる?」
「・・・・・・・・・・・・」
ドフラミンゴは人から見下されることを最も嫌う、プライドの高い男だ。
人々の娯楽のためにコロシアムに立つわけがない。