第6章 真珠を量る女(ロー)
「この世界は海で繋がっている。貴方がどこにいても、私は願っているから」
「・・・・・・・・・・・・」
「どんな絶望にも屈しないで。貴方の背中に刻んだ覚悟と同じくらい命を大事にして、と───」
クレイオとローを助けた人魚も今、どこかで二人を見守っているだろうか。
海の水面はキラキラと輝き、まるでローの船出を祝福しているかのようだ。
「キャプテーン!! 出航の準備が整ったよー!!」
潜水艦のドアが開き、中からべポが叫んできた。
波は穏やかで、出航するなら今がその時。
「クレイオ」
ローはクレイオの顎を上に向けさせ、口元をほころばせた。
「行ってくる」
白ひげが死に、誰も見たことのない“新しい時代”が幕を上げた。
その渦の中心へと飛び込むことになるローは近い将来、世界を揺るがす事件の首謀者となる。
だが、クレイオにキスをするローはとても優しく、彼女のもとへ再び戻ってくるという、強い意思を瞳に宿していた。
「出航するぞ!!!」
「アイアイ!!」
波しぶきをたてながら速度を上げていく、ポーラータング号。
船体に大きく描かれた“ハートの海賊団”のシンボルが、ゆっくりと青い海に沈んでいく。
“D”はまた必ず嵐を呼ぶ───
ローが呼ぶ嵐はきっと、このシャボンディ諸島までその雷鳴を轟かせるだろう。
その身体には、世界最高の彫り師が刻んだ刺青。
その心には、決して折れることのない信念。
その道の先には、いずれ掴み取る野望。
「貴方に海のご加護がありますように」
もしいつか父の故郷ワノ国に行くことがあったら、島の人に伝えて欲しい。
ホリヨシの信念は今も生き続けている、と───
クレイオは平らな水面に戻った海をいつまでも見つめながら、誇らしげに微笑んでいた。
第6章 「真珠を量る女」 Fin.