第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
翌朝、太陽が上がる前に目を覚ましたクレイオは、自分の身体が昨晩のままであることに驚いた。
ゾロは“早く寝ろ”と言ってくれたが、寝ている間に気が変わるかもしれない。
そこに裸の女が寝ていれば、欲望が芽生えてもおかしくはない。
そう覚悟していたのだが、結局、ゾロが手を出してくる気配は一度も無かった。
「・・・・・・・・・・・・」
見れば、ゾロは三本の刀を右腕でしっかりと抱きながら、胡坐をかいた姿勢のまま寝ている。
近くには空いたウィスキーのボトルが転がっていた。
「本当に・・・床で寝たのね・・・」
前の客の精液を掻き出してくれた感触がまだ残っている。
あんなに温かく、優しい手は初めてだった。
寝ているゾロの顔を見ているうちに、もう少しだけ一緒に居たいという気持ちが沸き上がってくるが、客が起きる前に部屋を出なければ。
クレイオは音を立てないようにベッドから起き上がると、毛布をゾロにかけてやる。
「何をされても、客とは一緒に朝を迎えない。これが私に残った、最後のプライドだから・・・」
ごめんなさい。
そして、ありがとう。
「ロロノア・ゾロ・・・」
一音一音、噛みしめるように。
ゾロの名前を呟いたクレイオは、自分を買った男を残し、そっと客室から出て行った。