第5章 花火 ~君に残す最後の炎~ (エース)
「力を抜けるか?」
その海賊の声は驚くほど優しく、戦闘のために鍛え上げられた肉体は少し熱を帯びていた。
緊張からかどうしても身体が強張ってしまうクレイオを安心させるように、エースは何度も額にキスを落とす。
「海賊のくせに・・・いつもこんな風に女の人を抱くの?」
「そりゃ・・・知らねェ方がいいと思う」
“どっちだろう”とクレイオはボンヤリと思った。
今よりも優しく抱くのか、それとも自分本位に抱くのか。
どちらにしても不安になるだろう・・・という、エースなりの気遣いか?
「どっちにしろ、たぶん初めてだからな」
「初めて?」
「優しくなるのか、乱暴になるのか、ヤッてみねェことには分からねェ。ここまで惚れた女と寝たことがねェんだ」
「・・・・・・・・・・・・」
比べるだけ無駄だから、知らない方がいい。
だからエースはそう言った。
「優しくても乱暴でもどっちでもいい・・・ただ、エースが思うままに抱いてくれれば」
「・・・肝が据わった女だ」
「海賊を家に泊めるような女よ、何を今さら」
するとエースは口の左端だけを上げて微笑んだ。
きっと彼のクセなのだろう、何度かこうして笑うのを見ている。
クレイオもエースの顔を引き寄せて口付けると、勝気な瞳で微笑んだ。
「頼むからベッドだけは燃やさないでね、“火拳のエース”」
「そんなヘマはしねェさ。燃やすのはお前だけだ」
と言いながら、両肩を火に変えて見せる。
薄暗い部屋がボウッと明るくなったかと思うと、その光に見惚れている隙を突いて胸の突起を指で弾いた。
「ッ・・・」
突然の刺激に驚いて見上げたクレイオに、エースは悪戯っ子のような顔で笑っている。
「もっと声を出させてやるから、待ってろ」
そう言うなり、心臓がある方の乳首を口に含んだ。