第4章 真夏の夜の夢(ルフィ)
「オイ、おめェら!! 最後にこの船の力をクレイオに見せてやろうじゃねェか!!」
舵を取っているフランキーが叫んだ。
海軍の砲弾の雨から一気に逃れる方法が一つだけある。
「おう! やってくれ、フランキー!!」
ルフィは麦わら帽子を被りなおすと、大きな笑みを浮かべた。
クレイオ!
最後にもう一個だけスゲェもん見せてやるぞ。
「野郎共!! 出航だァァ!!!」
船尾の大型砲門は、従来の帆船では不可能な機動を可能にする。
「風来・・・バーストォ!!!!」
サニー号は貯めたエネルギーを衝撃波として放出し、海軍の軍艦を全て置き去りにして一気に空へ飛び出していった。
昨晩、ルフィとクレイオが見た“月の道”を辿るように羽ばたいていく海賊船。
その行く先は明るく、まるで彼らの未来を象徴しているかのようだ。
運命はかくも不思議なもの。
「たった一晩の夢が、一人の人間の生き方を変えてしまうこともある」
恋を知らず、美しいものを知らず、ただ人目を避けながら生きてきた77年。
ある夜、醜女は夢を見た。
それはとても甘く、とても美しい夢だった。
彼女はその夢から目覚めた時、頭の先からつま先まで覆うマントを脱いだ。
生まれてきた意味ではなく、いずれ訪れる死についてでもなく。
生きていくことの意味を考えるようになった。
すると不思議なことに、彼女は自分がどれほどの“愛情”に包まれているかを知ることができた。
「好きな所へ連れてってやる。どこへ行きたい?」
それは、麦わら帽子を被った少年が醜女の老婆に見せた、真夏の夜の夢。
第4章 「真夏の夜の夢」 Fin.