第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
「たとえ死んでも、おれは女は蹴らん」
レディーを愛する為に生まれてきた。
女性を傷つけるくらいなら死を選ぶと断言し、自らを“恋の奴隷”と呼ぶ。
「“女のウソ”は、許すのが男だ」
騙されても、理不尽な要求をされても、殺されても、目の前にいる女性を愛そうとする、究極のフェミニスト。
それが、サンジという男。
自分の命よりもレディーの命に重きを置く彼に、呆れた目を向ける女性はこれまでに何人もいた。
レディーの為とはいえ自分の命を軽んじる彼を、叱咤する女性もいた。
しかし、誰一人として、サンジの“レディーに対する扱い”に怒りを覚える女性はいなかった。
この日までは───
ここは、グランドラインのとある島。
“水の都”ウォーターセブンとログで繋がっているその島に、パンッと頬を打つ音と、女性の怒鳴り声が響く。
「こんな侮辱を受けたのは初めてよ!!」
殴られた左頬の痛みすら感じることなく、金髪の男は呆然としながら目の前の女性を見つめた。
地面には、叩かれた勢いで彼の口から落ちてしまった煙草。
「・・・クレイオちゃん・・・?」
そう呼ばれた女性は、怒りで震えながらサンジを睨んでいた───