第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
海原を目指して進むメリー号はもう、米粒のように小さくなってしまっている。
だけど、クレイオの目からは涙が止まらなかった。
自分の誕生日を祝ってくれる人がいる、それだけでとても幸せだった。
そんなクレイオの瞳にさらなるサプライズが映る。
ドォン・・・!
「・・・え?」
ドォン・・・!
その音は、炭鉱事故の爆発音にも似ていた。
だけど、多くの人の命を奪った火とは違い、それは大空に咲く大輪の花。
「花火・・・?」
麦わら海賊団からのバースデープレゼントが、空に花開く。
まさに、クレイオがこれから進む道を明るく照らしてくれるようだった。
これほどの誕生日プレゼントがあろうか。
「ありがとう、麦わらの一味・・・」
そして・・・
「ありがとう、ロロノア・ゾロ」
悲しみも、苦しみも、痛みも、もう過去のもの。
私はこれから生まれ変わる。
だって今日は・・・
「私が生まれた日だから───」
かつて娼婦だった女にはもう、絶望の色は一切ない。
この島の人達はきっと、いつか許してくれる。
信じてさえいれば・・・
クレイオはすでに見えなくなってしまった海賊船に、いつまでもいつまでも手を振っていた。
第2章 「ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~」 Fin.