第10章 機械仕掛けの海賊はブルースを歌う(フランキー)
ここに一丁の拳銃があったとしよう。
目の前には心から憎む敵。
お前はそれを手にして、引き金を引くことができるだろうか。
銃に込められるたった一発の弾丸が、お前の命と引き換えであると知ったとしても、引き金を引くことができるだろうか。
「これは、おれ達とお前の勝負だ」
海賊は怯えることなくそれを手に取り、銃口を相手に向けた。
その弾が外れれば、死は己に襲い掛かる。
「もしお前が生きていたら、おれ達の負けだ」
冷たい鉄の身体に覆われた、生身の心。
生身の身体に覆われた、冷たい鉄の心。
果たして、一発の銃弾はどちらの心臓を貫くのだろうか。
「その勝負・・・受けてたとう」
一度人生を終わらせなければ、潰えた夢を取り戻すことができないのなら。
翼が折れた一羽のカモメはそっと目を閉じ、拳銃が火を噴くその瞬間を待つ。
「いい度胸じゃねェか・・・惚れちまいそうだぜ」
“運命”という名の拳銃は、カモメを生かすのか、それとも殺すのか。
海賊は口元に笑みを浮かべ、どちらか一方の命を奪う引き金を引いた。