第15章 CROCUS
時は遡る事、ハンコックのバースデー。
俺はと一緒に来たゾロを呼び出していた。
「話って何だ?」
「決まってるだろ?!の事だッ!
・・ゾロ、もしかしての事
「好きだ」
俺の言葉を聞かずゾロは宣言した。
それがどうした?と素知らぬ顔。
コイツ、俺の気持ちわかってて言ってるのか!?
「なぁ、キッド。
俺は遠慮しねぇぞ。遠慮してちゃ欲しいものは手に入らねぇからな」
「なッ・・!」
「それに、お前は眼中にねぇんだよ」
そう言い残してゾロは俺の前から去った。
それから現在。
ホストを辞め、バーテンダーに復帰した俺はと会うチャンスが無い。
朝と夜、逆転した生活。
「キラー・・・、俺もうダメかも」
ボソッと同僚のキラーに愚痴を零す。
「フッ、お前にしては諦めが早いんだな」
しょうがねぇだろう。
ライバルがあの人達だったら、どう考えても太刀打ち出来ねぇ。
なのに、ゾロは諦めていない。
それがどんなに俺のプライドを傷付けたか・・
「・・高嶺の花なんだよな」
「まぁ、手に入らねぇモノを想ってもお前が辛いだけだ。
さっさと諦めて次に行け、次に。
女は山ほどいるさ・・・」
キラーが言う事も一理ある。
が、諦めきれたら苦労はしねぇ。
「でも、今回は急にどうしたんだ?」
いつもなら意地張って最後まで粘る癖にとキラーは、磨いていたグラスをそっと棚に戻した。
「・・・あのポスターお前見た?」
「ポスター?」
「駅やビルにデカデカ貼られまくってたポスターだよッ!」
「・・あぁ!急に張り巡らされたポスターなッ!!
見た見た!別嬪だったな、アレ」
「・・だよな、綺麗だった」
は〜ぁと、長ったらしいため息が零れ落ちる。
アレが元凶だ。
アレさえなけりゃ、こんな気持ちになる事はなかった。