第13章 YELLOW SULTAN
手入れが行き届いた、広い日本庭園。
真ん中には、大きな池が設けられ小さな渡り橋まである。
こんな場所、テレビで見た時代劇の上様の庭園しか知らない。
だが、その日本庭園に異物がいた。
池に鯉でもいるのだろうか、熱心に見つめる毛むくじゃらのデカイ巨大。
「グララ・・!ペポ!!」
「「!!」」
その後ろ姿に歓喜するエドワード。
話の流れから巨大が犬だと分かるが初見では、シロクマにしか見えない。
「えっ?!」
庭に視線を走らせ、慌てて縁側から飛び降りるマルコ。
俺達は、不可解にその様子を眺めていた。
「マルコ?!どうした?」
声をかけるエドワードに、マルコは犬を見てフッと肩の力を抜く。
今まで気付かなかったが、ゆっくり動いた巨大の前には小柄な女がいた。
規格外な犬の大きさで全く女の姿が見えなかったのだ。
何故ここに・・
「その娘っ子は何だ?」
存在を知らなかったらしいエドワードの問いに、口籠りながらマルコはこれまでの経緯を話した。
「このアホンダラッ!
さっさと言わねぇか!若い者に辺りの見回りをさせろ!!
それと、先生にも知らせろ!!
きっとお探しだッッ!」
流石、この辺りを締める組長の一喝。
身体を硬直させていたお付きの組員は、一斉に散らばり掛けて行った。
ジッと女を見つめ、考え込むボルサリーノ。
そんな様子を見ながら、俺は別の事を考えていた。
この子がここにいる理由は分かった。
だが、先生?
思い当たる人物は1人しかいない。
「エドワードさん、彼女はわっしらが引き取るよぉ〜」
「「!!」」
突然、宣言したボルサリーノにエドワードは勿論、俺まで耳を疑った。
「・・お前さん方の手を煩わせるつもりはないんだが?」
「わっしらは警察官だよぉ。
困っている市民に手を差し伸べるのは、わっしらの仕事じゃないかい?」
何を一体考えている?!
この子は、偶然ここに居合わせたに過ぎない。
俺達が調べている事にまったく関係が無いはずだ。