第10章 PLUMERIA
約束の時間、5分前。
待ち合わせの場所に小走りに近く小さな足音。
『ゾロ〜!!』
高いヒールで転ばねぇか心配になり、無意識に自分から迎えに走った。
『きゃっ』
短い悲鳴と共に、スポッと俺の胸に突っ込む小さな頭。
ほのかに香る、甘い香りに頬が緩むが同時に眉にシワが寄る。
案の定、転けたな。
『うっ、ごめん』
「そんな靴で走るな」
慌てて俺の元へ来るのは内心嬉しいが怪我されちゃ困る。
『待った?』
首を振り、それとなくその手を握り歩き始める。
一昨日知らない番号からの電話。
プライベート用のスマホが鳴り、誰か番号変えたのか?としか考えず出た俺の耳に届いた声は、ずっと聞きたかった声だった。
『突然頼んじゃってごめんね』
改めて謝るの頭を俺は、トントンと軽く叩く。
「どうせ行く予定だったんだって言っただろう」
ハンコックの誕生パーティへ一緒に行って欲しいと言われた時は、思わず立ち上がってしまった程驚いた。
コイツから誘いを受けるとは思ってもいなかったのだ。
『うん、でも良かった。
あの番号がやっぱりゾロの電話番号で』
手帳に書いた番号。
無意識にプライベートの方の電話番号を書いていた。
いつ気付くかといろんな想いが胸に溢れ、電話が無い数日間は、後悔の嵐だった。
名刺を渡しても一切連絡をくれねぇ。
ほぼ諦めていたのだ。
にしても、隣を歩くを直視出来ねぇ。
走ってきた時は転ばねぇか心配でそれどころじゃなかったが改めて見たは、綺麗だった。
いつもとは違うメイク、髪型、服装。
どれもこれもにピッタリ良く似合っていた。
このまま連れて帰りてぇ・・・
そんな気持ちが溢れ出てきた。
女にそう想う事すら俺は初めてて、自分自身の気持ちに余裕が持てないでいた。