第8章 CHAMOMILE
【オマケ】
ひんやりと静けさが辺りを包む。
病院の屋上、ドクターヘリの発着場の赤い光が俺の顔を照らした。
手術が終わり、ペンギンを俺の用事に連れて行こうとフロアを歩いていた。
ダークグレーのイブニングドレスの女が目に止まる。
明らかに場違いなその格好を何故が目で追っていた。
その後ろ姿に見覚えはない。
だが、華奢な足に履いた高めのヒールがその脆さを余計に感じさせ不安が胸を覆った。
つい声を掛けたら振り返ったその顔に俺は驚いた。
そして、降ってきた女に俺の心臓が飛び出るところだった。
まだ、この手に抱いた温もりが残っている。
夜風に当たれば消えると思っていた。
あの女の子に似た笑顔を持つ女。
二度と会う事がないと思っていた女から懐かしいあの香りが立ち込める。
あの花は、たまたまか?
今になって現れたこの幻想を俺はどう忘れたらいい?
【オマケ2】
「似合うじゃねぇか」
恥ずかしそうに頬を赤らめた。
まさか、その姿を見せに来るとは思っていなかった。
『いろいろしてもらってありがとうございます』
頭を下げたに俺は目を細めた。
アップにしてサイドに流した髪から見えるうなじ。
Vネックの胸元には、何も飾らなくとも魅力的に見える素肌。
膝上のミディアムスカートからスラッと伸びた足や細い二の腕を可憐なレースが魅力的に肌を隠す。
にピッタリと似合ったそのドレスに俺の口角は上がる。
ただ、その華奢な足に履いたハイヒールが他の男からの贈り物。
それを履く事は分かっていたが、俺好みの格好をしているが俺のモノではないと主張している様で全く気に入らねぇ。
「他の男に見せたくねぇな・・・」
ポロっと本音が溢れ出る。
だが、あいにくは知り合ったばかりの女の子の話に夢中で俺の言葉なんて聞いてねぇ。
退院を却下した医者をマジで憎んだが、この俺が手を掛けたっうお礼に食事でも付き合ってもらうかと、心を鎮める。
「なぁ、。
綺麗だとか言ってくるヤツがいたら俺にしてもらったって言うんだぞ」
首を傾げながらも頷く。
これぐらいいいだろう。
少しは牽制させなきゃおちおち他の男の目に触れさせられねぇよ。
fin